2017年10月7日土曜日

「ICS 軽井沢文庫だより」第12号

「木の成長に学ぶ」

宮﨑彌男

 
 「ICS軽井沢文庫」は、たった3畳のログ風ハウスですが、木の香りの芳しい文庫と祈りのスペースです。ここに、私がトロント留学時代に訳した、「木」という題の一篇の詩が掲げてあります(前号写真参照)。この色紙の原本は、当時私を祈りをもってトロントへ送り出したくれた日本キリスト改革派東京教会の牧師夫人、矢内正子姉にプレゼントしましたので、ここに掲げられているのは、そのレプリカです。
 原本の色紙には、「とうきょうのやどやのおかみさまへ」と書かれています。学生時代、仲間の青年たちと、よく食事のお世話になったり、泊めてもらったりしたからです。ちなみに、矢内正子姉は、牧師夫人であると共に、オルガニスト、詩人でもありました。先生を天に送り、今は一人となられた姉妹の老境に主の祝福がありますように。 
 同姉の了解を得て、少し訳文に手を加えたものを以下にご紹介します。

Mat Cupido画
「木」(フレデリック・ W・タミンガ、
     宮﨑彌男訳)

   木は生活のシンポル。
   その枝を張ったからだのゆえに
   木は家族だ。
   多くの実を結ぶゆえに
   木はいのちだ。
   天にむかってのびるようにつくられている。

だから 根は地中深くしっかりと張り巡らされ
その美しい葉脈はいのちの水を追う。
だから その冠は光を求めて身をのばし
天と地を結ぶ絆(きずな)のイメージとなる。
     
     木はわれわれの冒険のシンボル。
     もろもろの活力がその波打つ枝に
     あふれている。
     高く上げられたその腕で豊かな実を
     結ぶために、すべての力をかりいれる。
     一つ一つの小枝は手だ。たくみな道具だ。
     一つ一つの葉は呼吸する口だ。
   
   木はすまいのシンポル。
   何のわけへだてもなく、よくいらっしゃいましたと歓迎する。
   鳥はよく知っていて
   陽の当たる木の葉に心地よさそうにうずくまる。
    くもはそこに巣をめぐらし
    人はそこに風をさけて
    雨やどりの場所を見出し
    日中(ひなか)の暑さから身を守る。

もろもろの霊は思いのままに吹き
幹の腋下(わきした)にやどる。
嵐が来るたびに木はその身を曲げる。
それでも、くずおれてはしまわない。
   
   木は多様な生活のシンボル。
   日中(にっちゅう)の夢と
   夜の守りのシンボルだ。

   だれでも
   意味なく
   木を倒す者は
   いのちそのものを倒す。
   そのような人は
   汚れた者
   畏怖(いふ)の念を持たぬ者
   不信者
   殺す者
   とみなされる。
   そのような人のために
   赦しを祈り求めよう。

   なぜなら、かれらは
   何を壊してしまったかを
   知らないからだ。

 この詩の作者、フレデリック・タミンガは、オランダ系カナダ人で、この詩を書いたときには、バンクーバー近郊の広大な地に、奥さんと6人の子供たち共に住んでいると紹介されていました。野性的なクリスチャン詩人と言うべき方です。この詩は、Mat Cupido編の詩集、Bunk Among Dragons に収録されていたのですが、この題名はどう訳したら良いのか、今の私にはわからないので、原題だけ記しておきます。この詩集には、詩編147編やⅠコリント13章のタミンガ訳も収録されており、励まされる詩集です。
 上掲の「木」では、木が「天と地を結ぶ絆(きずな)のイメージ」として詠まれている所に、私は、特に心惹かれました。「天が開け、神の天使たちが人の子の上に昇(のぼ)り降(くだ)りするのを、あなたがたは見ることになる」と言われた主イエスの御言葉(ヨハネによる福音書1:21)を思い起こさざるを得なかったのです。
 ちなみに、私たちは、この詩全体の中に、木もまた万物の造り主なるキリストの愛の内に生かされている、との作者の素朴な信仰が脈打っているのを感知しないでしょうか。たとえば、次の箇所など。「木はすまいのシンポル。何のわけへだてもなく、よくいらっしゃいましたと歓迎する。…」
 軽井沢の木々もまた「天と地を結ぶいのちの絆」です。私たちの思いを、主のおられる天に向けてくれます。タミンガの「木」は、追分の散歩道の両側に並ぶ、生きた木々でもあるのです。それで、私は「ICS軽井沢文庫」の片隅にこの詩を掲げることにしたのです。
 今月の軽井沢新聞(2017年9月号)に、次のような全面意見広告が出ていました。「土地を売るため、建設のための、皆伐(かいばつ)に反対します。すべての樹木を切らなくても土地の販売はできます。全ての樹木を切らなくても建設はできます。美しい緑は軽井沢の財産です。樹木があるから、リスや野鳥は暮らすことができ、爽やかな空気が保たれます…」(軽井沢自然景観会議、会長/羽仁進、理事長/鈴木美津子)。アーメンです。
さらに、木について思いを巡らして見ましょう。文庫周辺の木は、高さ20メートルくらいの木が多いです。樹齢は、よく調べていないのでわかりませんが、40年くらいでしょうか。もう少し年が行っているかも知れません。樹齢40年の木であれば、毎年50センチずつ伸びてきたわけです。正に創造主なる神のいのちの恵みです。
 私たちも、日々に同じ創造主のいのちの恵みをいただいているのではないでしょうか。そうです、3年ならば、1,095日、神のいのちの恵みをいただいてきました。これからもいただくことができるでしょう。3年ならば、1,095日、いのちの恵みをいただくことができます。この間、1年に50センチ、1日に1.37ミリ、成長することができるのです。天に向かって伸びる木に学ぶ教訓です。
ICS軽井沢文庫にて
これからの軽井沢/追分での3年間、わたしは、知恵と力を尽くして「ICS軽井沢文庫」の育成につとめたいと、先月号に書きました。毎日、一歩一歩前進できればと願っています。カタツムリのような前進か、新幹線のような前進か、それは日によって違うでしょうけれども、前進してゆきたいと願っています。
 目標とするところは、共同体としての JICS(Japan Institute for Christian Studies、日本キリスト教学術研修所)を立ち上げることです。より具体的には、基本信条・会則の決定、所員、主事、賛助会員の募集、等々です。3年後に、どこまで進んでいるか。それは、主の御旨によることで、私たちには定かではありません。しかし、この3年間、カタツムリのような前進であっても、新幹線のような前進であっても、御言葉と“霊”の導きににしたがって前進したいのです。どこまで前進できるかに拘わらず、「愛に根ざして真理を語る」ことに専心したいものです(エフェソ4:15、Ⅰコリント13章)。

  更に言われた。「はっきり言っておく。天が開け、神の天使たちが人の  子の上に昇(のぼ)り降(くだ)りするのを、あなたがたは見ることになる」。           (ヨハネによる福音書1:51)


(「長野佐久教会」のホームページで、「ICS軽井沢文庫だより」をごらんいただけるようになりました)

 
 私どもが毎週の礼拝に出席し、会員になっています (旧)佐久伝道所は、去る9月18日に、(旧)長野伝道所と合併し、日本キリスト改革派長野佐久伝道所として、牧野信成牧師を迎え、新たな歩みを始めることとなりました。9月18日には、佐久交流センターに94名の来会者を得て、長野佐久伝道所設立式(合併式)と牧野信成教師・宣教教師就職式が行われました。台風も逸れた秋空の下、恵みあふれる一日でした。
 このように、牧野先生が長野佐久伝道所で牧会を始められてから数週間が経ちましたが、早速の所、「長野佐久教会」のホームページを立ち上げ、その「地域と交流」リンクの一つとして「ICS軽井沢文庫」を加えてくださいました。
 まず、「長野佐久教会」のホームページをごらんください。「地域と交流」リンクの「佐久市」をクリックすると「ICS軽井沢文庫」のブログが出てきます。ここで最新の「ICS軽井沢文庫だより」をチェックすることができます。


(石丸 新先生による「ウェストミンスター大教理問答研究ノートを掲載します)

 
 今月号より、このブログに、石丸新先生の「ウェストミンスター大教理問答研究ノート」の一部を掲載させていただくことになりました。先生の許可もいただいています。ラベル 「ウ大教理の聖餐論(1)」 をクリックしていただくと、読んでいただくことができます。
 石丸先生は、ここ20年来、絶えず、私の「ウェストミンスター大教理問答」の訳業を励まし、応援してきてくださった大先輩の先生です。「ウェストミンスター信仰基準」、とりわけ、「ウ大教理問答」の研究と翻訳には、並々ならぬ関心と情熱をお持ちの先生です。
 私が 2014年6月に教文館より『ウェストミンスター大教理問答』を出版しました前後の数年間、毎月のように「研究ノート」を私宛送ってきてくださいました。その中には、大変貴重なものも多くあり、何とか多くの方に読んでいただきたいと思ったこともしばしばでした。この度、「ウェストミンスター大教理問答の聖餐論」、「ウェストミンスター大教理問答の洗礼論」、「ウェストミンスター大教理問答における『神を見る』」など、先生が特に深い関心を持ち、情熱を注いで来られたテーマについての研鑽を先生がまとめられたものをお送りくださいましたので、お許しを得て、まずは「ICS軽井沢文庫」のブログに順次掲載させていただくことになりました。今回では、まず手始めに「ウェストミンスター大教理問答の聖餐論」の1~3章を掲載します。石丸先生による手書きのノートを宮﨑淳子姉がパソコンに打ち込んでくださいました。その労を主にあって感謝します。
 なお、石丸新先生は、現在、日本キリスト改革派東関東中会の引退教師ですが、86才となられた今もお元気で、主の日には、諸教会で礼拝奉仕などにご活躍です。読んでくださればおわかりと思いますが、先生は信条文書にふさわしい適切な日本語を絶えず求める一方で、老若男女の教会員と共に生きる現代的な感性も今なお持ち合わせておられます。


(「ICS軽井沢文庫だより」の印刷・保存のために


「ICS軽井沢文庫」を開き、右欄のラベル「ICS軽井沢文庫だより第12号を選択します。次にパソコン右上のオプション設定のマーク(縦に3つの点)をクリック、「印刷」を選択します。左欄のオプションを「両面印刷」にし、「詳細設定」の中の「倍率」を150、「背景のグラフィック」もオンにしてください。「印刷」ボタンを押すとOKです。

※次号は11月初めに出す予定ですが、それまでにも、思いつくままに、直したり、付け加えたりすることがありますので、時々チェックしていただければ、ありがたいです。






【連絡先】

389-0115長野県北佐久郡軽井沢町追分36-23 宮﨑彌男・淳子

TelFax 0267-31-6303(携帯) 080-3608-3769

Eメールmmiyazk41@gmail.com   ブログ「ICS軽井沢文庫」<ics41.blogspot.jp>