2018年7月30日月曜日

「ICS軽井沢文庫だより」第17号

『ICS軽井沢文庫だより』創刊2周年

宮﨑彌男

 

近くで咲いたあじさい
先日(7月8日)、長野佐久教会(佐久会堂)で、説教奉仕を依頼され、「信仰によるアブラハムの生涯」と題して、新約聖書のヘブライ人への手紙11:8~12からお話をしました。その時に教えられたことなのですが、アブラハムは75才の時に,「あなたは生まれ故郷、父の家を離れて,私が示す地に行きなさい」という神の(召しの)声を聞き、「主の御言葉に従って」カナンの地へと「行き先も知らずに出て行きました」(創世記12:1~4、ヘブライ人への手紙11:8)。これが信仰によるアブラハムの生涯の出発点となりました。75才の時です。このことを知ったとき、私は、「えっ!」と叫びそうになりました。私も、2年前の6月14日、75才の時に「ICS軽井沢文庫だより」第1号を出し、当日付で「ICS軽井沢文庫」をオープンさせたからです。このことにつきましては、ぜひこのブログのラベル欄「ICS軽井沢文庫だより」第一号をクリックして、ごらん下さい。そこに、この文庫の開設に到る経緯と、この文庫の趣旨等が記されています。
ICS軽井沢文庫
「信仰者の父」と呼ばれるアブラハムと、一介の小さなキリストの僕にしか過ぎない私とを比べるのは、おこがましいことかも知れませんが、私も、2年前、75才の時に、「行き先も知らずに」信仰によって文庫を始めたことは確かなのです。ハレルヤ!
 この第1号で私は、「この『たより』はこれからも、当面月1回を目処に出したいと願っています」と記しています。2年ばかり経った今、17号まで出すことができたのですから、まあまあの実績ではないでしょうか。皆様方の祈りとご協力のおかげと感謝しています。
 しかし、そうは言うものの、今年に入ってからは、1/22(14号)、3/9(15号)、5/24(16号)、8/1(17号)の4号のみで、ほぼ2か月に1度のペースになってしまっています。「文庫だより」にしては、いささか高度な?内容にこだわり過ぎたのかも知れません。そこで、今後は、初めに戻って、「『文庫』に関する情報のみならず、私や家内の身辺の出来事なども適宜報告させていただきますので、気軽にお読み下さい」(第1号)。神学的/哲学的エッセイ風のもの、翻訳、書評等を含めることを願っていますが、報告だけでも、月初めには、ブログ更新を行うようにしたいと思っています。
 それで、ちょっとしたルール作りなのですが、
 ①原則として、メールによる更新通知は行わず、毎月1日付けで更新します。
 ②お申し込み下さった方には、“メール会員”登録をし、メールによる更新通知をするか、(メールアドレスのない方には)「文庫だより」を毎月郵送します。
 ③私の一存で、メールによる更新通知を差し上げることがありますが、その場合は、“メール会員”登録はしません。(但し、不要の場合はお知らせ下さい)。
 ④郵送料等のため、有志による献金を受け付けます。
 以上。
 このような形で、文庫活動が一歩前進することを願っています。Soli Deo Gloria!

「主はアブラムに言われた。『あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める。祝福の源ととなるように。あなたを祝福する人をわたしは祝福し、わなたを呪う者をわたしは呪う。地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入る』。アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった」(創世記12:1~4)。

【6~7月の活動報告】


マタイ6:29-30
6月6日(水) 信州神学研究会、於・ICS軽井沢文庫・会議室。出席者:長田秀夫、牧野信成、中山仰、宮﨑彌男。昼食後、宮﨑が「共通恩恵の実践的意義」と題して、発題。
6月10日(日) 長野佐久教会(佐久会堂)にて説教奉仕(ヘブライ11:4~7)。
6月12日(火)~13日(水)  日本キリスト改革派教会大会役員修養会に部分出席。於・豊橋市・ホテルシーパレス。会場で『キリスト者の世界観』を販売。30冊完売。
6月17日(日) 山梨栄光教会にて説教奉仕(ヘブライ11:1~4)。
7月8日(日) 長野佐久教会(佐久会堂)にて説教奉仕(ヘブライ11:8~12)。
7月16日(月・祝) 日本カルヴィニスト協会年次総会/講演会にて講演奉仕。「ウォルタース『キリスト者の世界観』(増補改訂版)の魅力」。於・神戸市・神港教会。『キリスト者の世界観』(総計)33冊を販売。以下に、当日の講演レジメ(改訂版)を掲載します。



講演レジメ】「ウォルタース『キリスト者の世界観』の魅力」
(2018年7月16日、日本カルヴィニスト協会)
                            
本書の三つのキーワード(基本テーマ)を解説することを通して、この本の魅力を伝えたい。更に,今回の「増補改訂版」において、ウォルタース&ゴヒーンの共著として付け加えられた「あとがき」によって、世界観と伝道の関係を探りたい。

Ⅰ創造の回復としてのあがない。
・本書の構成との関連で。一般の読者には、4章「あがない」から読むことを勧めている。しかし、この本の真の価値は、創造論から説き起こし、創造の回復として救い(あがない)を語っている点にある。「救い、あるいは贖いを創造論的に理解している」(『カルヴァンとカルヴィニズム』p.111)。
・「恩寵は自然を廃棄せず、完成する」(トマス)→「恩寵は自然を回復する」(H.バフィンク)。これこそが改革主義的思想の真骨頂。Cf. G.スパイクマン『改革主義神学―教義学のための新しいパラダイム』「プロレゴメナ(最初に言われるべきこと)は創造と共に与えられた神の世界に向けての“原初の言葉”に根ざすものでなければならない。…このような神の創造の定め(creation order)についての聖書の教えを土台とするのでなければ,改革派神学はその根元から崩れてしまう」(p.40)。それほどに、改革派神学/哲学において創造論は重要だとの主張。
・ウォルタースは、この“創造の回復としての救い”を終末論的にも展開し、今の時代の文化的業績/遺産をも視野におく積極的な終末論を志向する(『キリスト者の世界観』pp.79-81Cf. RCJ「終末の希望についての信仰の宣言」四の())。この点は、本日のメインテーマ「現代と終末論」との関わりにおいても重要と思われる。

Ⅱ構造性と方向性 
・構造性と方向性は、カルヴァンの言う二つの秩序(「創造の秩序」と「罪とあがないの秩序」)に対応している。
・構造性(structure)とは、…「すべての事物の創造に基づく恒常的な構成、あるいは、あるものを本当にそのものたらしめる本性」で、「創造の法、すなわち、多種多様な被造物の性質を成り立たせる神の創造の定めに根ざすものである」(p.95)
・方向性(direction)とは…「神に従うか、神に逆らうか,の二つの傾向性」であって、「一方では、堕落による被造世界のゆがみやひずみ、他方では、キリストにある被造物のあがないと回復を指している」(同頁)
・ウォルタースは、第五章「構造性と方向性をわきまえる」において、改革、社会的更新、攻撃性、霊の賜物、性、ダンス等、今日のキリスト者が直面する具体的な問題を取り上げ、構造性と方向性の両面から考えることによって、聖書的・世界観的に健全な取り組みが可能になることを例証している。例えば、攻撃性(aggression)は、構造的には、「神の創造による人間性の一部」であって、「良いディスカッション、健全な競り合いやゲーム、積極的なリーダーシップの発揮、恋人の追求、さらには、愛の交わりにおいてすら攻撃性の要素は本来的に必要なものだ」が、方向性において、「憎しみを伴う攻撃性は、創造者によって与えられた良い賜物の歪曲」となる、とのクリスチャン心理学者(H.ヴァン・ベルレ)の所説を紹介している」(pp.155-156)。

Ⅲ聖俗二元論の克服
・聖俗二元論…聖書における「世」=「まだあがなわれていない生の全体のことであって、それはキリストの外にあって,罪に支配されている」(リダボス)。Cf.ヤコブ4:4。多くのキリスト者が、「世」を被造世界のある限定された領域のみを指すものと理解してきた。すなわち、通常「世俗的」「セキュラー」と呼ばれる領域―芸術、政治、学問(但し,神学は除く)、ジャーナリズム、スポーツ、ビジネス等の分野。これに対して「聖」なる領域…基本的には、教会と、個人的な信仰生活、「聖神学」より成る領域(p.103)
・ウォルタースは、キリスト者の陥りやすい聖俗二元論を、古代教会のグノーシス主義と同根の「非常に大きな間違い」と述べている(同頁)。
・図A-Cpp.125-126私たちが生かされている世界を領域的に図示。
B…聖俗二元論的な世界観。聖と俗を上下の縦方向に区別する。聖…上から教会、聖神学etc.。その下に分岐線が入る。線の下が俗…世界、社会、哲学etc.
C…改革主義的キリスト者の世界観。横方向に聖と俗を位置づける。間に亀裂のギザギザ線。左側のすべてが主のもの。主の世界。ここにおいても、先導的機能(leading function)と基礎的機能(foundational function)の順位的区別はある。上にあるものを求めると同時に、地にあるものへの責任(down-to-earth responsibility)も求められる。

Ⅳ世界観と伝道
・世界観の役割…「福音の力を今日における教会の生活に媒介する働き」。自動車のギア装置(エンジンの回転力→ギア→車を動かす)、あるいは、水道管(水源地→水道→各家庭の生活用水)のようなもの(p.209)。
・聖書物語(福音)→世界観→伝道…「教会が宣教の使命を果たすために、福音についての思索が必要なことは常に自覚されてきました。福音に対して忠実であることは,単に聖書の言葉を繰り返し唱えることに尽きるものではありません…このように、現代という時代の要請に応えるために、創造・堕落・あがないの基本的カテゴリにおいて福音を考えることは、教会の恒常的な使命に属することなのです」(pp.208-209

結語


  私たちは,聖書と伝道(教会形成)を媒介するものとして、信条とカテキズムの重要性を認識してきた。このことに変わりはないが、今後は,これに加え、現代という時代の要請に応えるために,“世界観教育”(ワールドビュウ・カテキズム) が必要である。本書の注意深い学びは、間違いなくそのための第一歩となり、聖霊の主権的なお働きと相俟って、今日の教会に霊的更新をもたらす。

※なお、東京キリスト教学園理事長、廣瀬薫氏による本書の書評が『本のひろば』2018年8月号に掲載されました。好意的かつ適切な書評を公にしてくださり、感謝しています。ぜひご参照ください。



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389-0115長野県北佐久郡軽井沢町追分36-23 宮﨑彌男・淳子

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